植物中には生体異物が入ってくるとそれを解毒し、体内の液胞や細胞壁に隔離するシステ
ムが備わっている。下記の図はそれを模式的に示した図であり、Phase I 〜IIIのステップにより解毒が行われる。Phase
Iのステップでは主に酸化等により、脂溶性生体異物がより親水性の物質に変えられる。この段階では特にmonooxygenaseであるチトクローム
P450(CYP)等の酵素が働くことが知られている。Phase
IIにおいてはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GSTs)等の酵素により抱合化が行われ、物質はさらに水に溶けやすい形態に変換される。この変換さ
れた物質はPhase IIIにおいて液胞中や、apoplast等に隔離されることで解毒が完了する。
解毒酵素活性を用いたバイオモニタリングは広く水棲生物で用いられている。魚や水
鳥の肝臓中のCYP1A活性をEROD試験などで測定し、PAHsやPCBsの汚染レベルと相関があることを示した研究例は多い。しかし、都市内大気を対
象とし、大気室をバイオモニタリングする研究例は殆ど見られていない。
そこで、当研究室では、植物を用い、その植物中の解毒酵素活性から大気質を評価する研
究を進めている。下記図はポトスを沿道や喫煙室など様々な場に置いた
場合のGSTs活性の違いを示している。特に喫煙室に長期間設置した場合に有意にGSTs活性が上がっていた。これを元に現在研究を進行中である。