バイオマスはカーボンニュートラルな資源であり、その利用が地球温暖化対策として進められています。食糧との競合を避け、有効なバイオマス利用を進めるには、有機系廃棄物など未利用バイオマスの活用が望まれます。同時に、都市における全体の廃棄物マネージメントを考えていくことも重要となってきます。
 
ベトナムにおける rice huskの有効利用戦略 (卒業生, Thao)
 
ベトナムのメコンデルタ地域では、脱穀した籾殻(rice husk)を河川投棄する問題が生じています。本研究では、rice huskを河川投棄するのではなく、発電やバイオ燃料製造、燃焼灰の利用といった、様々な有効利用戦略シナリオを設計し、LCCO2、LCcost、地域住民受容性などの観点から評価しています。具体的には、ベトナムのAngiang Provinceを対象地域とし、同エリアで発生する稲もみ量、現在使われている燃料の実態、などを現地調査によって明らかにし、構築した18のシナリオにおける、ライフサイクルでのCO2発生量と、コストを算定しました。
この算定に加えて、各シナリオの住民受容性を調査するため、燃料利用に関わる項目間の選好(例えば安全性を重視するのか、コストを重視するのか、環境への影響を重視するのか、環境の中でも水環境を重視するのか、大気環境を重視するのか、といった選好)を現地での聞き取り調査に、AHP(階層分析法)を適用し、定量的に明らかにしました。その上で、ここで得られた重みづけ係数を、構築した18のシナリオの評価に適用し、当該地域でのよりよい稲もみ利用に関する考察を行っています。


 ⇒タオさんの研究に関する簡単なコラムがこちらにあります。

バイオ燃料のLCAによる有効性評価 (D3 Joana, D2 Mariska)
 
バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料の製造に関しては様々な議論がなされています。製造や肥料などに費やされるエネルギーも算定し、トータルで見て、本当にCO2削減に寄与するのか、という議論もありますし、食料との競合や土地利用の変化といった、より社会的な面での影響に関しても、多くの議論がなされています。
本研究では、ブラジルのサトウキビからのバイオエタノール製造、インドにおけるジャトロファからのバイオディーゼル製造、インドネシアにおけるパーム油からのバイオディーゼル製造を対象とし、それぞれのアクティビティがもたらしうる、CO2削減効果を、ライフサイクルアセスメントにより定量化していきます。

 
タイにおけるホテイアオイの有効利用戦略 (M2 村井)
 
ホテイアオイは昔から水質浄化に使われてきましたが、現在、タイの様々な運河においては、自然繁茂するホテイアオイが、船舶の運航妨げ等の大きな問題となっています。本研究では、問題となっているホテイアオイを刈り取り、それをバイオマス資源として有効利用することによって、刈り取りのために人員およびエネルギーをかけたとしても余りある、便益を生み出せないか考えています。まず最初の思いつきは、ホテイアオイからバイオエタノールを作成できないか、ということでしたが、その他のエネルギー生成シナリオも含め、その有効性を評価して行きます。 
 
食品廃棄物の有効利用戦略の提案 (卒業生, 山口)
 
食品リサイクル法が施行され、食品廃棄物の再利用が進められてきています。ある地域を対象とした場合に、そこで発生する食品系廃棄物の利用法には、飼料化、堆肥化、メタン発酵など様々な利用法が考えられます。当研究では、LCCO2、costの観点から、有効な利用戦略シナリオを提案していきます。
 
ソウルにおける廃棄物マネージメント (卒業生, Sora)
 
LCAにより廃棄物処理シナリオの評価を行なう際、どのように地域住民の意識を盛り込んでいくかは重要な課題です。現在のLCIAにおいては、エンドポイントにおいて地球レベルでの影響を算出し、コンジョイント分析やAHPを用いた統合化を行なうのが一般的となっています。本研究では、ミッドポイントで算定された地域レベルでの影響を住民に問い、エンドポイント評価との比較を行なうことにより、上述したような政策決定に住民意識を取り込む手法論の検討を行っていきます。