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東京大学大学院工学系研究科 環境システム研究室

研究内容RESEARCH TOPICS

温室効果ガスの削減

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「都市余剰地に対する新エネルギー導入の効果と住民受容」

少子高齢化時代の到来に伴い、多くの余剰地が発生することが予想されます。二酸化炭素削減に向けて、そのような余剰地に太陽光パネルを導入してはどうでしょうか?発生する余剰地に全て太陽光パネルを敷き詰めたとしたら。。。多量の二酸化炭素削減が可能となります。しかし、一方で、そのような都市は実際に人々が居住するに適した都市となり得るでしょうか?景観は無機的で、人々の居住快適性が十分保たれないことが予想されます。
本研究では、そのような着想から、緑と太陽光を様々な割合で都市に導入した場合の、二酸化炭素削減量を算定し、その結果を用いて、住民に対し、どのような都市が望ましいかを、アンケート調査により解析しました。対象場所には下関市を選び、一対比較法により、人々の選好を抽出しました。


「様々な技術、環境施策のライフサイクルアセスメントによる評価」

様々な施策や技術間の比較評価をするために、ライフサイクルアセスメントによる環境負荷の算定を行っています。具体的には、タイにおける建築工法間の比較や、途上国における分散型排水処理技術間の比較を行う研究を進めてます。それぞれ、現地特有のデータ収集を行うと主に、各資材や燃料使用に伴う環境負荷を、施策のライフサイクル全体でみた環境負荷を算出することによって評価する取り組みを進めています。


廃棄物マネージメント

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「バイオ燃料のLCAによる有効性評価」

バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料の製造に関しては様々な議論がなされています。製造や肥料などに費やされるエネルギーも算定し、トータルで見て、本当にCO2削減に寄与するのか、という議論もありますし、食料との競合や土地利用の変化といった、より社会的な面での影響に関しても、多くの議論がなされています。本研究では、ブラジルのサトウキビからのバイオエタノール製造、インドにおけるジャトロファからのバイオディーゼル製造、インドネシアにおけるパーム油からのバイオディーゼル製造を対象とし、それぞれのアクティビティがもたらしうる、CO2削減効果を、ライフサイクルアセスメントにより定量化しています。


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「未利用有機廃棄物の有効利用戦略」

バイオマスはカーボンニュートラルな資源であり、その利用が地球温暖化対策として進められています。食糧との競合を避け、有効なバイオマス利用を進めるには、有機系廃棄物など未利用バイオマスの活用が望まれます。同時に、都市における全体の廃棄物マネージメントを考えていくことも重要となってきます。
本研究室では、これまでベトナム アンジャン県における稲籾殻や、タイ タチン川における繁茂ホテイアオイなど、現地の水環境や大気環境悪化をもたらしている未利用廃棄物の有効利用戦略を、温室効果ガスやコストの面から評価し、有効な利用戦略を提案する研究を進めています。

「島におけるマテリアルフロー解析」

島は多かれ少なかれ本土から隔絶されており、物質と人の流れの量と速度が制約されます。これは、市、県、更に広域にわたり障壁なく物質の流出入が生じる本土地域とは対照的です。しかし、この制約は必ずしも否定的にとらえるべきではありません。資源とエネルギーの自給率を高め循環型社会を形成すること、さらに持続可能な消費へと向かわせる動機を生むことができるのが島の大きな利点と言えるでしょう。島が有する有利な点を生かし、短所を解決する大きな方向性は、物質ではなくサービスを指向した社会に変貌させることといえます。すなわち、島がハンディキャップを持たない情報技術等によって、物質と人流の制限による欠点を補償すればよく、更に言えば、持続可能な社会の姿として現在めざされている、物質の移動や消費が小さいサービスを指向した社会の形成は、むしろ島で進む可能性があります。島の隔絶性は物資の制約や高価格を通じて消費行動を変化させ、資源消費を低下させるとともに内部での循環利用が促進されることが予想されます。
本課題では、八丈島や小笠原等の実際の島を対象に、水、電力、プロパンガス、食料を始めとして各種消費物資の消費量、島内での生産量、島外からの流入量、島外への流出量、さらに島内の循環利用量を把握することを目的として調査を行っています。


環境教育・環境配慮行動の促進

「市民の環境配慮行動実施状況の把握と心理因子の関連評価」

様々な環境施策を評価するにあたっては、その施策によりもたらされる環境負荷の算定に加えて、施策の対象となる住民の意識を明らかにすることが、効果的に施策を遂行する上で重要といえます。当研究室では、家庭における多種多様な環境配慮行動を取り上げ、それらが実際に市民にどれ程実施されているのかを、大規模アンケートにより明らかにすると同時に、行動の背後にある心理因子を明らかにする研究を進めています。また、特に東日本大震災以降の節電行動に絞った評価も実施しています。

下図は共分散構造解析による各環境配慮行動への心理因子の影響構造解析の結果の一部です。



「情報提供が環境配慮行動にもたらす影響評価」

人々の行動を促進する手法の一つとして、情報提供があります。当研究室では、LCAにより算定した環境負荷の情報や、心理因子に働きかける情報等、様々な情報が、人々の行動意図にどのような影響を与えるのかを明らかにする研究を進めています。
具体的には、例えば、ソウル市民を対象に、様々な情報提供の効果をアンケート調査にて明らかにすると同時に、現地の大手フリーペーパーにおいて実際に情報提供を行い、その効果を検討するといった社会実験なども行っています。(下記図は情報提供した際の図の一部)



「ライフサイクル的な思考法教育に向けた基盤整備」

大人になってからの行動変容は容易ではありません。初等教育からの素養として、消費に伴う環境負荷の認識を養っていくことが重要と言えます。本研究では、日常生活に近い要素を扱う家庭科教育の中で、ライフサイクル的思考法を教育していくための枠組みや教材、LCAデータベースの検討を行っています。さらに整備した日常行動に関わるLCAデータベースは、大人へのアプリ等への利用も考え得ます。これらの要素を検討するため、現在は下記のような研究を進めています。
・LCAデータ利用に伴うユーザー(消費者、ツール開発者)ニーズの明確化
・現行家庭科教科書における環境要素の取り扱い状況のテキスト分析による評価(下図)


生活の質(QOL: Quolity of Life)

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「都市構造とQOLの関連評価」

コンパクトシティ構想や公共交通機関の整備などのインフラに関わる施策が、ターゲットとなる地域の環境負荷削減に貢献する可能性が考えられています。しかし、市民生活に関わる施策においては、住民の生活の質(QOL: Quality of Life)を保つ、さらには改善することも同時に求められます。

当研究室では、コンパクトシティなどの施策による影響について、環境負荷の観点のみならず、住民のQOLに与えるインパクトについても同時に評価して行く研究を進めています。具体的には、カルカッタや韓国、日本の中核都市、日本の下町などを対象とした研究を現在行っています。


流域マネージメント

「気候変動に伴う洪水予測および被害軽減施策の提案」

タイのハジャイ県は、2000年にきわめて大きな洪水被害を受けました。このエリアは、これ以外にも何度も大きな洪水の被害を受けている地域です。今後気候変動の影響により、さらに洪水被害が増えることも予想されます。
本研究では、気候変動予測モデルを使用して、将来の降雨パターンの予測を行うと同時に、その予測に基づき、水理モデルにより洪水予測を行っています。さらに、将来の土地利用の変更やインフラ整備、さらには地域住民への情報伝達といった、様々な施策を行う事による、洪水被害緩和効果を算定し、評価することを研究目的としています。





タイ, ハジャイ県
における洪水予測


「流域圏における水システム再構築における多目的最適化」

流域圏を対象に、上下水道システムや再生水の利用等の水システムを再構築する際に、考慮しなければいけない要素には、ライフライクルで見た環境負荷や、地域で排出される環境負荷、水循環への影響、コストなど様々な要素が挙げられます。当研究室では、このような様々な要素を統合化するのではなく、多目的最適化をおこなうことによって、複数の最適解を得る研究を進めています。これにより、ある一つの要素だけを最適化するような解(例えばコスト最小化など)ではなく、複数の要素が、そこそこ良い、というパレート最適解を得ることができます。このような複数の最適解を得ることによって、様々な住民選好に対応できる、新たな施策提案に繋げられると考えています。

水辺の価値評価

「水辺に対する住民の価値評価構造の評価」

都市における水辺は、親水空間として重要な役割を果たしていると言えます。しかし、その捉え方は、人によって大きく異なってきます。どれ位のお金をかけて、どのような親水空間を構築するのが良いのかを検討するには、人々の水辺に対する価値評価構造を明らかにしていくことが必要といえます。
 当研究室では、オンラインアンケート、コンジョイント分析、共分散構造解析、潜在クラス分析などを通して、人々が水辺に対して抱く価値評価を定量的に明らかにする研究を進めています。

「江戸城外濠における環境用水導入に伴う水質改善効果の評価」

城郭濠は都市における重要な水辺空間のひとつです。しかし、閉鎖性水域である場合も多く、夏場にアオコが発生する等、水質面で問題を抱えている堀も多く見られます。江戸城外濠についても、主たる水源が天水とCSO(合流式下水道雨天時越流水)のみであり、水質は必ずしも良いとは言えません。当研究室では、主に、新たな水源の導入によって希釈することによる、外濠での水質改善を目指し、下水処理再生水導水の効果を、導水ルートや水量、水質の面から検討しています。


Infoworks, GISによる外濠への流入CSOシミュレーション

リスクコミュニケーション

「飲料水における情報提供とリスク認知の関連性評価」

市民生活においては、専門家が提供する技術と、それを利用する市民の間で情報や理解のギャップを生じていることが見受けられます。当研究室では、市民とのコミュニケーションの例として、リスクコミュニケーションを取り上げ、どのように化学物質や微生物によるリスクを伝えることによって、市民の理解が深まるかを検討しています。
特に飲料水を取り上げた研究では、市民に様々な飲料水のリスクに関わる情報を提供した場合に、人々のリスク認知がどのように変化するかを評価しています。例えば、水道水に関して、クリプトスポリジウムやウイルスなどの情報と、塩素消毒の情報を提供した場合や、感染事例の情報を提供した場合のリスク認知の変化を見ています。また、数値情報として、DALY (Disability Adjusted Years)を提供する場合を想定し、その場合、数値の示し方の違いによる、リスク認知への影響評価を行っています。


その他のテーマ

「まずは研究室の扉をたたいてみて下さい」

「持続可能な社会の構築」というのは、とても幅広い概念であり、関連する研究は多種多様なものが有り得ます。皆さんが興味を持つ研究テーマがある場合には、まずはそのアイデアを持って研究室の扉を叩いてみて下さい。より適切な、都市環境工学講座の他の研究室を紹介できるかもしれませんし、内容を詰めて行くことで、我々の研究室で行う事が可能かもしれません。また、当研究室では、実験を行う学生も受け入れています。単に水処理や廃棄物処理といった技術開発に留まらず、実際の生データを取りつつ、その社会の中での重要性を評価するといった複合研究を進めることが可能です。